「特殊な土地ですから、珍しい植物が生えていて、錬金術師たちがその採集に行くくらいですかね。この大陸に特化した種族もいます」

「ふむ」

 天空大陸は大気の流れに乗って移動しており、四つの大陸の上空を不定期に回っているらしい。

 科学的な理由とはかけ離れたものである事は明白だが、どういう理屈で浮いているのか興味は尽きない。

「僕たちの世界は、全てマナによって支えられています」

「マナ──偏在する超自然的なエネルギーか」

 という事は、大陸が浮いているのもそのマナによるものだろう。それをどのように使い、巨大な物体を浮遊させているのかはまるで見当も付かない。

「大気のバランスが崩れているということは、マナが何かしらの理由で揺らいでいるのかもしれません」

 魔術師(メイジ)の一人、ステムが口を開いた。

 人間で言えば二十三歳ほどとまだ若く、その力は目を見張るものがあるとメイジ長のお墨付きだ。

 灰色の毛に百二十五センチほどの背丈で深い青色のローブに身を包み、トネリコの木で造られた杖を持っている。

 その杖には、シャラシャラと耳障りの良い音を響かせる銀細工の飾りが取り付けられていた。