──その夜、ベリルたちはこれからの事を話し合うため、広場に集まっていた。

「バランスが崩れた原因を探れば、元の世界に還る算段もつくだろう」

「俺たちが原因ならば、どうしようも無いんじゃないのか?」

「それなら、むしろ解決したも同然なのだがね」

 原因が三人であるなら、すぐに調べる事が出来るのだから。

「私には知らないものが多すぎる」

 バランスが崩れていると気付いたものの、原因ではないものを取り除いていくにはまだまだ理解や知識が不足している。

 かと言って、彼らの文字を学ぶには時間がかかる。異なる世界の言語を勉強する機会だと思えば実に魅力的ではあれど、今はその余裕はない。

「あの」

 ティリスの声に、レキナやラトナの視線が一斉に彼女に注がれた。

「これ。なんですか?」

 凄く美味しい!

「スフレチーズケーキだよ」

「ふわふわで溶けるような食感!」

 唐突に会話をぶった切られたレキナたちは呆気にとられ、そういえばベリル様が作っていたなと思い起こして張り詰めていた空気が和らいだ。

「気に入ってもらえて何よりだ」

 スフレとは、フランス語で吹くという意味なのだが、このチーズケーキの発祥は日本だと言われている。

「これまでにして、また明日にでも話し合うとしよう」

 ベリルはそう言い残し、集落から少し離れた所で星空を仰いだ。