そうして鈴の音が合図となり、不思議な言葉が紡がれ双方の魔法円が輝きを放ち始めた。

 いよいよかと思われたとき──

「発動しない!?」

 輝きが失せてメイジたちは騒然となった。もしや詠唱か手順を間違えていたのかと一斉に古文書に群がる。

「やはり発動しないか」

「どういうことだ」

 呟いたベリルにリュートは眉間のしわを深く刻む。

「そんな気はしていた」

「あんた。解っててやらせたのか」

 しれっと答えたベリルに目を吊り上げる。

「予想通りになるとは限らないだろう」

「だったら初めからそう言え!」

「リュ、リュート」

 ティリスはリュートをなだめつつ、まだみんなといられるんだと顔をほころばせた。

「意識していない段階での経過と結果が見たくてね」

 話してしまうと、その時点で結果に変化が生じる可能性がある。

「貴様……」

 気を揉んだティリスの気持ちはどうなるんだと怒りの感情がふつふつとリュートから伝わってくる。

 だったら、すねて残ればいいとティリスに言ったお前はどうなんだと心中で発しベリルはその視線を受け流した。

 図らずも、リュートが向ける感情に私はこうも反応している。なんだかんだで幾らか、珍しい事だが彼らの感情に乗せられているようだ。