「まぁ、それなりにはね。でもまっ、逃げるわけにもいかないしっ。」


そう言って、寮の方へ歩いて行った。


-ガチャッ


「ただいま~。」


部屋には、誰もいないはず。

皆仕事だって言ってたしね。


「おっかえりぃ~♪」

「って…櫂!?」


なんでいんの!?


「仕事は!?」

「早く終わらせて来たよー!」


ニッコリスマイル。


「美希、荷物ここでいいか??」

「あ、うん、ありがと…。」


玄関にトンッと荷物を置いた峰。


「峰、わざわざお迎えありがとー♪ じゃぁね!!」


そう言うと、櫂は峰をさっさと追い出してしまった。


「えっ、ちょっ…櫂!?」

「ねぇ、美希。」

「なっ、何…??」


振り向いた櫂の目が冷たかった。

思わず怯む。


「本当に何も覚えてないの??」


ジリジリと迫って来る櫂に、後ずさりするあたし。


「何もって…。」

「本当に??」


-トンッ


気付けば、後ろは壁で前は櫂。

両脇には櫂の腕。

完全に、逃げ場を失った。