「美希ー!!」


バァンッと音がして、勢いよく病室のドアが開いた。


「櫂…。」

「あれっ、皆もう来ちゃったの?? 早いなぁ…。」


裏を覗かせながらチッと言う櫂。

チッじゃねぇよっ…。


「今ね、先生の所に行って来たんだ。」

「うん…。」

「そしたらね、きっと一時的な記憶障害だろうって。」

「記憶障害…。」

「そっ。マンガとかでよくあるやつ!」

「お前どんなの読んでんだよ…。」

「えっ!?」


記憶障害…。


「おい、美希。」

「何?? 勇士…。」

「お前、どこからどこまでなら覚えてる??」

「えっと…出逢って…同じ部屋になったとこまで…かな。」


結構ザックリ無くなってんだな…。

って事は…俺と付き合ってた事も、婚約してたことも、蘭や怜奈、ばあちゃんのことも覚えてねぇってことか。


じゃあ


「Miki☆として活動してた事もか??」

「え?? あたし、なんかやってたの??」


…忘れてるっぽいな。

クソッ…。


「おい、櫂。」

「なぁに??」

「どうやったら記憶は戻るんだよ。」

「はっ…? おい、勇士…。」

「僕知らなぁい。」

「っ…。」

「勇士、焦ったってしょうがないだろ??」

「焦った所でなんの解決にもならないしね。」


…そんなことくらい、ちゃんと分かってる…。