「その他に、コルト、トカレフ、あのワルサーだって用意してます。いろいろあるけど、一丁どう?護身用に持っとくと便利ですよ。そして今、ご購入いただくと、もれなくあの、ニューナンブも付いてくる。これはお得です」
銃の押し売りなんて聞いたことない。
「いやー、危ないんで銃だけは持たないことにしてるんですよ。スイマセンけど」
俺は断った。
男は
「チェッ」
と舌打ちをし、トランクを閉め、去って行った。
俺みたいなカタギに言われても困る。
銃は違法なのだから。

さらに俺はてくてくてくてく歩いた。
すると前方から、がたいのいい、柔道着を着た、イガグリ頭の男が、こちらにやって来るのが見えた。
柔道男は、何か叫んでいる。
「えー、はーいあーんはいらんかねー。はーいあーんだよー」
ナンナノよそれ。
俺が猜疑心で眺めていると
「あ、そこのアナタ。はーいあーんは、いりませんか。結構いいよ、これ。一回380円ね」
「え?はーいあーんてなに?」
すると柔道男は、脇に抱えていた、風呂敷包みを降ろし、風呂敷を開いた。
それは、大き目の弁当箱であった。
蓋を開けると、やはり中身はお弁当だった。
お握り、ウインナー、天ぷら、タマゴ焼きなどが詰まっていた。
わりと豪華だ。
男はさらに、柔道着の懐から箸を取り出し
「私がアナタに、お弁当を、はーいアーンて、この箸で食べさせてあげるんですよ。何か良いですか。タマゴ焼きなんかどうです?」
「ゲッ」
俺はちょっと、腰が引けた。
そして
「ちょっとそれは勘弁して。お腹も空いてないし」
断ると柔道は
「そうですかあ?解りました。いつもこの辺で、商売してるんで、必要とあらば、声をかけて下さい。では」
と去って行った。
可愛いネーチャンならまだしも、なぜ男に、はーいあーんで飯を食わせて貰って、金まで払わなくてはいけないのだ。
商売など成り立たないだろうに。
しかも何故柔道着なのだ。
まあ良い。