私は、彼に沢山の思い出をもらいました。

その全ては愛なのだと感じさせてくれるような温もりもくれました。

今、私の隣で静かに眠る彼に感謝の気持ちでいっぱいです。

もう、それだけで良いのだと思いました。

とたんに蛇口が壊れたように私の涙腺から涙が溢れ、瞳の中に綺麗な虹が架かりました。

彼は、私の掠れた泣き声に目を覚まし、私の膝の上にある箱と写真を見て悲しそうな顔を見せました。

彼は優しく私の手を握りしめ、瞼に涙を滲ませながら言葉を放ちました。

「気づいてしまったんだね、今まで黙っていてごめんな」

私は、その言葉を聞いた瞬間に彼との生活は終わってしまう、消えてしまうのだと悟りました。

「ううん、、、謝らないであなたは何も悪くないでしょ」

彼は再び私の手を強く握りしめてくれました。

「君は自分が死んだことに気づかずに、この家に戻って来たんだ」

そうなのです。あの事故で亡くなったのは『彼ではなく私』だったのです。

私は、自分の骨壺の箱と写真を見つけて真実を知ってしまいました。

私は自分の膝の上の骨壺を見ながら彼の話を聞きました。

彼は私と一緒に居たいがために事実を伏せ、彼が死んでいるのに現れたと私が勘違いをしていることに気づいていたことを話して下さりました。

彼は私と同じ行動をしていたことに少し可笑しくて嬉しく思いました。

いきなり、彼は私を見て泣き出したのです。

私の体が透けていくのが分かり、自分でも不思議な感覚でした。