私たちの家は決して広くはないのですが今はとても広く孤独を感じます。

少し歩いただけなのに体が重く肩に鉛を背負っているようで気だるさを感じ、私はベットに横になることにしました。

二人で横になると少し窮屈だったのですが、今は手が伸ばせるほど広いのです。
枕に顔を沈めると彼の匂いが心地よくて、もしかしたら彼が生きているのではと錯覚してしまうのです。

先程まで温かかった枕が冷たくなっていることに気づき顔を上げると染みのようなものが出来ていました。
そうなのです、私は泣いているのです。
行き場を失ってしまった悲しみは私の中でぐるぐると回っているのです。

この悲しみには出口などないのだと私は悲観なっていました。

そんなことを考えながら私は深い眠りに着きました。
夕方の四時を回ったころでしょうか、聞き覚えのある声で私の名前を呼んでいるのが聞こえたのです。

瞼をゆっくりと開けると人が私の顔を覗いているのです。

初めは視界がボヤけてよく分からなかったのですが、徐々に視界の霧が晴れて明確に相手の顔を見ることができました。

私は驚きのあまり声をあげてしまいそうになりました。

私の目の前に人物は彼だったのです。

そして、彼は何事もなく私に笑みを見せてきたのです。

「優子、おはよう。もう夕方だよ、起きないと」

私は夢でも見ているようにふあふあした気持ちでした。
しかし、彼に触れることも出来たのです。
私は喜びと戸惑いで泣いてしまいました。

彼は私が泣いたことで驚き、困惑していました。




そうなのです、彼は自分が死んだことに気づいてなかったのです。