外灯がない道のせいでしょうか、それとも彼の手が滑ったのか私には全く分かりませんでした。

カーブを曲がり切ろうとした時、なぜか私たちはガードレールに吸い込まれるかの如く引き寄せられたのです。

意識が戻った頃には病院のベットに身を預けていました。
殺風景な病室に頭と左足に包帯が巻かれいる私だけという空間でした。

私が辺りを見渡しているとお医者様が病室に入ってきました。

事故で運び込まれたこと、二週間ほど目を覚まさなかったことをお医者様は丁寧に教えてくれました。
しかし、私はすぐに不安と違和感に襲われました。

病室を見渡しても私の体の一部とでも言えるものがそこには無かったのです。

そこで、私はお医者様に尋ねてみたのですが険しい表情をして口を閉ざしてしまったのです。

私は目に涙を溜めて、お医者様に何度も尋ねました。
お医者様は観念したのか、少し戸惑った様子で私に伝えてくれました。

全身の力が抜けていくのが分かりました。
その一瞬で生きる価値を無くしてしまいました。

正確に申しますと生きている意味がなく、最大の恐怖と言われている死という存在を恐れなくなりました。

それから、私は人形のような冷たい一週間を病室で過ごしました。

私の頭の中は、彼のことで埋め尽くされていました。それ以外は考えてはいなかったのです。




私を残して彼は死んでしまったのです。