泣く彼を抱き寄せて私は最後の時を待ちました。

薄れていく体と反比例するように彼と過ごした長かったようで短い時間の記憶が鮮明に残っており、薄れることなく、逆に濃くなっていくのを感じました。

今の私たちの間には言葉など必要ないのです。

ただ、抱きしめるだけで彼の思うことが体に流れてくるのです。

それは膨大な量の〝愛情〟と少しの〝悲しさ〟でした。




私と彼の周りを囲むもの。




それは、




『弱さと愛情』


でした。





彼は愛した人の骨壺が入っている箱を少しの間抱きしめて泣いていた。




二人を繋いだのは『優しく撫でる嘘』でした。