そう。
それはほんのわずかの差。

あと1秒でも遅れていたら、千佐登は大好きだった人に殴られてた。


バキッ・・・・と鈍い音がした後
私は地面に叩きつけられた。


ドサッ・・・


「え、・・・沙弥・・・・?!」

「・・・・なんだコイツ、おい千佐登ォ、お前のダチかよ?」


男は私を不思議そうな目で見る。
千佐登は私の元へ駆け寄る。


「沙弥!どうして・・・・こんな所に・・・それに・・・・なんで・・・」
涙ぐんだ千佐登は私に話しかけた。

私はすぐに立ち上がり、男のほうを見た。


「・・・・アンタが」

「は?」

声にならない怒りがこみ上げる。
喉が嗄れるほどの怒り。


「いくら、アンタにとって邪魔な存在だったとしても、うるさいから女の子を殴るって何なの!!?アンタはそうじゃないかもしれないけど、千佐登はアンタの事好きだったのに!!・・・・二度と、千佐登の真剣な想いを、踏みにじるような事はしないでッ!!!」

早口で言った私はゼェゼェ、と酸素を補給した。

「・・・・・沙弥」

「謝りなさいよ!!千佐登に!・・・先輩後輩関係なく、今すぐ!!!」

「・・・・てめぇ、黙って聞いてりゃ、何でもかんでも偉そうに言いやがって・・・」


また男が今度は私に殴りかかろうとした。
私は千佐登を守るように千佐登の前に立った。

「沙弥!!危ない!!!」