「さて、アド交換も終わったし。そろそろ行くか?昼前には隣町に着くだろうな。」
「レッツゴー!」
「……?けんさん?そんなとこでいじけてないで行きますよ?」
「え?あ、あぁ…。てかりよ、ちょっと最近言葉厳しくなってない?」
「そうですか?」
テクテク…
「せんはやっぱ、V2かな?あのバランスと換装性能はピカイチです!」
「バランスといえばZだろうよ!機動力もあるし、なによりカミーユ最高!」
「…なんの話をしてるんですか?」
「『最強のガンダムは?』だってさ。俺はよくワカンネ。」
「私も分からないです…。………っ!」
突如不穏な気配に気づくりよ、それより一瞬遅く、全員が反応する。
「5人…いや、6か…?」
「ううん。8人いるよ…。木の上に2人いる。」
冷静に状況を分析するせん、周囲の木々に隠れる敵意に対して、無言で円を作り身構える
「さっきはゆうやが活躍したからね。今度はせんがやるよ。」
「せんが?やれるのか?」
一人余裕の笑みを浮かべるゆうや、その気になれば一瞬で全員を消し炭にできるからこそ生まれる余裕である。
「せんだって、伊達に戦士じゃないんだよ。……来たっ!」
一斉に八つの影が飛び出した
全員揃ってターバンを巻き、目以外はほとんど白い布で隠れていた。
両手には中型のナイフを持ってはいたが、所々錆びたり欠けたりしていた。
「さぁ!いくよ~!」
腰に携えていた両刃の剣を引き抜く
木漏れ日に反射し、銀色の刃が煌めく
飛び上がったせんが敵と交差する
キンッという乾いた金属音が何度も響き
敵はゆうやたちの目の前
せんは敵の背後に着地した
同時に
8人全員白目になり前のめりに倒れた
口から泡を吹き
微弱に悶えていた
「はい、終わったぁ終わったぁ~!」
剣を鞘に納め締まった表情だった顔が急に緩くなった。
「おぉ~!やるじゃんせん!全員みねうちか~。」
「えへへ~、せんだって、やる時はやるんだよぉ~。」
「ただもうちょっと笑い成分欲しかったな。お前も神も本気じゃん。」
「たまには真面目なとこも見せないと!」
ヒソヒソ…
「明らかにせん、すごいよな…」
ヒソヒソ…
「確か一緒にゆうやさんのハイスペックに文句言ってましたよね…?」
「にしてもどこのやつらだ?こいつら?」
パサッ…
「右頬に二本の切り傷…『蜃気楼』の方々ですね…」
「しんきろ~?」
『蜃気楼』
世界最大の盗賊集団
金品のみ奪う、食料は買うがモットーである
全員右頬に二本の切り傷をつけるのが入団条件
「全国に散らばってるから首都防衛軍『十六夜(いざよい)』も収拾つかねぇんだと…」
「………うちの国、王様がいるのに首都でもなんでもないの!?」
「そうですよ?隣町に行くのに山5つも越えるぐらいですから…」
「そんなド田舎にいる王様って、王様って言えるの…?」
「だからあの程度の軍資金しか渡してくれなかったんじゃないですか?」
…あ~、なるほど!
(全員納得)
「しかし蜃気楼か…、これで目つけられなきゃいいが…」
「そんなに厄介かなぁ?せん一人でも余裕だったよ~?」
「倒すのは余裕でも何回も向かって来られたらイヤだろ?それに蜃気楼には、俺より強いやつはたくさんいるんだぞ?」
「でも…蜃気楼はこの頬の傷がシンボルマークなのに、なぜそれを隠していたんでしょうか…?」
「言われりゃそうだな…。もしかしたら、こいつらには何か裏があるかもな…。」
「まぁ、こいつら起こして聞くわけにもいかないし。早く行こうぜ。」
8人の気絶体をそのままにし、ゆうやたちは先を目指す。
「あの方たちなら…もしかしたら…」
木陰に隠れた一人の女性は、ゆうやたちに気づかれることなく、その場を去って行った
山と山の間にある小さな村
周りを木々に囲まれたのどかな雰囲気
村人ものんびりと農業に勤し…
「お待ちしておりましたぁ!救世主さまぁ!」
勤しんではいなかった
むしろ村人をあげて思いっきりゆうやたちを迎えていた。
「おおぅ!?なに?なに?なに?」
当然ながら4人はドン引きだった
村の入り口の塀のそばで扇状に村人が土下座状態なら、そら引くよな…
「えと…私たちは魔王のところに行く途中なんで…決して救世主では…」
さすが僧侶。相手を傷つけずにやんわりと断るのは得意だ。
「いえ!あなた方は救世主です!我々を蜃気楼の魔の手から救ってくださる天の使者です!」
半ば狂乱気味の村長。ここで帰ろうもんなら一揆もんである
「あの…でしたらまず…みなさん立ち上がってください…。それからお話を聞きますので…」
ヒソヒソ…
「おい!聞くのかよ!?これ絶対めんどくさいって…」
ヒソヒソ…
「仕方ないでしょう?休息と補給は必要ですし、放っておけません…」
さすが僧侶。非常に優しい娘である。学級委員に向いています。
小さな村のこれまた小さな木造の家、とは言っても村では一番大きな村長宅である。
4人は畳の開けた広間に横一列に座らされ、向かいには村長。
庭には隙間なく村人
ヒソヒソ…
「あの…怖いです…」
ヒソヒソ…
「せん、静かに…。俺も怖いんだよ…」
「あの…それで…。何があったのでしょうか?先程も蜃気楼とおっしゃってましたが…?」
「実は…。我が村は先日、蜃気楼に襲われまして…。む、村の若い女の子がたくさん、連れていかれたのです…」
ピクッ!
ほんの一瞬、爪をいじっていたゆうやが反応する。
「なるほど…。実は私たち、ここに来る前に蜃気楼に襲われました。返り討ちにはしたのですが…」
「せんが倒したんだよ~。」
「おぉ!それは頼もしい!…と、驚く前に。実は我々も知っているのです。おい、『とうか』はおるか?」
村長が手を叩くと、天井が開き、一人の女の子が軽やかに舞い降りた。
「はっ。ここに。」
膝上15cm、ノースリーブの極ミニ胴着を着た黒髪ツインテールの武闘家だった
ボソッ…
「90点。ツインテじゃなくてショートなら…」
隣にいたけんですら聞こえないほどの小声でゆうやは呟いた。
「この娘が全て見ておりました。それであなたがたが来るのが分かったのです。」
「あなたがたと蜃気楼の闘いは見ていました。しかし彼らは蜃気楼ではないのです。」
「……?どういうことだ?あれは確かに蜃気楼だった。右頬に切り傷があって…」
「いえ、彼らは女の子を連れ去った輩と意見を違え、蜃気楼を離脱した者たちなのです。」
とうかが正座に組み替えた瞬間、ゆうやが首を縮めたのを、りよは軽蔑の目で見た。
「意見を違えた?なぜだ?」
「それは分かりません。しかし元蜃気楼である輩を倒したあなたがたです。必ずややつらを殲滅してくれるはず!」
一生懸命体を揺らしながら語るとうかの脚の間を必死に覗こうとするゆうやを、せんが汚物を見る眼差しで見つめた。
「ぜひとも!あなたがたに!村の若い女の子たちを救ってほしいのです!この通り!」
m(_ _)m
床に手と額を付ける村長、村人も合わせて頭を下げる。
そんなことをされてりよが黙っているはずが…
「…若い女の子…と言ったな…?」
「「「!?」」」
今まで黙ってとうかの脚の間と格闘していたゆうやが口を開いた。
もう無理だと悟ったのだろう…
意外ととうかは見えないギリギリを分かっている。
「え、えぇ…」
「いくつか聞きたいことがある。答え次第では行かない、それを分かった上で答えるんだ。いいな?」
いつになく真剣かつ真面目な顔
よかった、行く気になったんですね(りよ)
珍しいじゃん。見直したよゆうや(せん)
こいつもマジな顔するんだな…(けん)
「その子たち、乳はでかいか?」