響は辛い時こそ、よく笑顔を見せた。
笑って、「大丈夫だよ」って言って。
「本当に強い人っていうのは絶対…
苦しい事を乗り越えて来た人なんだな…」
響の強さが、今やっと分かった気がした。
響の方が、いっぱい傷ついていっぱい辛い思いをしたはずなのに。
「俺…響に何もしてやれなかった。
響が俺よりも辛い思いをしていたなんて、考えないで…
いつもいつも、響に当たって…
響はいつも側にいて、黙って話を聞いてくれていたのに――…
俺は一度だって、自分から響の話を聞こうとはしていなかったのかもしれない。
こんな俺といても…
響は幸せだったはずないですよね…?」
フワリと柔らかい風が吹き、一瞬だけ香ったのは。
響の、優しい香りだったような気がした。