「…俺には何があったのか分かんないけどさ。
響ちゃんもさ、何かあった時はここに来て、こうして空を見上げて?
どんなに離れてても、きっと同じ空で繋がってるはずだから…」
この日。
あたしはきっと、竜に恋をした。
この人なら、あたしの事を分かってくれるんじゃないかって、そう感じた。
「…あ、あたしもう…行くね」
ベンチから立ち上がり、あたしは竜に声をかけた。
背を向けた時、竜が、あたしの名前を呼んだ。
「……また、会えるかな?」
その言葉に、あたしは振り返って…竜に笑顔を向けて言った。
「……うん。またねっ」
竜は笑って、あたしに手を振った。
あたしもそっと手を振り返し、一つ深呼吸をした。
あの日から。
お父さんとお母さんがいなくなったあの日から、初めて心から落ち着くことが出来た。