俺はもう一度涙をぬぐって、桜の木を見上げた。
悲しい時、辛い時…
ここで響と話していた。
いつもここで、響の涙を見ていた。
いつもここで、響の笑顔を見ていた。
「……響…」
俺はゆっくりと、桜の木に登ってみた。
頑丈な枝の部分まで登り、そこにそっと腰を下ろした。
響との思い出の場所。
こうやって一つずつ…
記憶から消えていってしまうのかな…?
「……あれ?」
枝の方に何かある…
俺は腕を伸ばしてそれを取ろうとした。
もう、ちょっと……
「…これ…?」
あったのは、ピンクのリボンが付いた封筒。
風で飛ばされないように、しっかりと枝に結びつけてあった。
俺は不思議に思いながらも、何気なく封筒を裏返した。