『……響には、家族はいません』
あたしがそう言うと、医者の顔色が変わったような気がした。
なんていうか、困ったような複雑そうな…そんな顔つきだった。
『そう、ですか。
それでは、あなたにお話しましょう。
場所を変えましょうか』
そう言って立ち上がった。
あたしはその言葉に頷いて、医者の後についていった。
ガチャ…
『どうぞ』
【応接室】と書かれたプレートがかかった部屋に入って、ソファに腰かけると…
医者は、あたしの正面に座って気の毒そうな顔で言った。
『実は…坂田さんに病気が見つかりました』
『…それって…』
『坂田さんは心臓に異常がありました。
その上、長い間放置していたので…かなり進行しています……』
次の瞬間。あたしはその場にペタンと座り込んだ。