雪のように
降り積もる
悲しみも
北風のように
吹き荒れる
怒りの感情も
冬の空気のように
冷たく乾いた
あの人との関係も
きっと
その温もりが
変えてくれるから
きっと
その優しさで
包んでくれるから
だから
あたしは
春を待つ
冷たい雪の下で
静かに眠る
春待草
両手を握り締めて
ただ黙って立ちすくむ
その手のひらに
握り締めたのは怒り
全身から溢れだしそうな
暗く歪んだ私の恋心
両手を握り締めて
ただ黙って宙を見上げる
その手のひらに
握り締めたのは悲しみ
瞳から溢れ出しそうな
冷たく静かな私の恋心
両手を握り締めて
ただあなたを想う
その手のひらに
握り締めたのは
あなたへの想い
口元から溢れ出しそうな
わがままで
饒舌な私の恋心
握り締めた手のひら
気を緩めたら
想いが溢れ出すから
握り締めた手のひら
ぎゅっともっと
強く強く…
あなたへの恋心が
指の隙間から
溢れ出てしまわぬように
あなたとの恋に
かたちはいらない
かたちあるものは
いつか壊れてしまうから
あなたへの思いに
かたちはいらない
かたちあるものは
いつかその姿を
変えてしまうから
あなたとの記憶の
かたちはいらない
かたちあるものが
あなたの不在を
余計につらくさせるから
ただ
その一瞬の恋に
ただ
その刹那の思いに
ただ
その記憶の中のあなたに
ただ
かたちもなく
揺れていたい
時計の針のように
重なり合うその時を
ただ静かに待ち続ける
焦らず同じリズムで
静かにその時を
待ち続ける
時計の針のように
足早に通り過ぎる
あなたの姿を追いかける
短い針が私
あなたのスピードに
いつも取り残され
いつもあなたの背中を
追いかける
時計の針のように
同じことの繰り返し
1秒
1分
1時間
1日
くるくるとただ
同じ場所を彷徨うだけ
時計の針のように
あなたと私
同じ場所を彷徨い続ける
歳を重ねるごとに
罪を重ね
幾重にも重なる手足の枷
その重みから逃れようと
捕らえられた手足を
バタつかせ
その重みから逃れようと
またひとつ罪を重ねる
桜の頃に
あなたを想う
蘇るのは
あの日の2人
桜色した淡い記憶
散り際の淋しさや
踏みにじられた惨めさは
流し続けた涙が
ぬぐい去り
まぶたの裏に焼き付いた
あの満開の桜だけが
私を捉えて離さない
ガードレールに腰掛けて
2人見上げた
満開の桜
桜色した優しい時間
きっと
幼すぎたんだね
あなたの弱さを
受け入れられず
あなたの過ちを
責めたてた
今ならもっと
上手にやれる
もう一度
あなたと2人…
桜の頃に
あなたを想う
叶わぬ想いを胸に
桜を見上げる
桜色の記憶に
涙がこぼれ落ちないように
ずっとずっと
忘れていた
こんな優しさが
あるってことを
あなたに拒まれて
忘れていた優しさに
気がついた
欲しかったのは
そう…
私を受け入れる
暖かい腕でなく
背中を押してくれる
力強い手のひら
だめだよ
そう窘めた
あなたの優しさが
私の心に突き刺さる
涙となって溢れ出すのは
こらえていた想い
涙がとまる頃には
今よりたぶん
優しくなれる
他人行儀な
あなたの言葉
傷ついたりしない
だってあなたと私
最初からずっと
他人だから
他人行儀な
あなたの眼差し
目を反らしたりしない
だってあなたの瞳
今初めて
あたしを見てる
他人行儀な
あなたの態度
泣いたりなんかしない
だってあなたと私
明日からもずっと
他人だから
あの頃の
夢をみた
あの頃の
ふたりの
夢をみた
あの頃の
笑顔の
ふたりの
夢をみた
目覚めたとき
現実が
霞んで見えたのは
きっと
知らぬ間に流れた
涙のせい