授業開始に間に合いそうになかった為、少し駆け足で教室に戻る。

何とか間に合い、着席する頃には息が上がってしまっていた。

「やあ委員長、珍しいね、駆け込み着席なんて」

クラスメイトの背の低いドワーフの男子生徒が言う。

「少し手こずってしまって…ルールの守れない人ばかりで嫌になりますわ」

罪のないその男子生徒には悪いが、ツンケンした態度で私は受け答えした。

机の上には巻物(スクロール)、折り畳み式の杖、そして羽根ペン。

私が選択している科目は魔法。

魔力を行使して自然現象を操ったり、超常的な現象を起こしたりする行為の総称だ。

この教室はそういった魔法を学ぶ『魔法科』である。

初等部でまず基本中の基本である小物を動かす魔法や簡単な占い程度の予知などを学び、やがて火や灯りを灯す魔法、風を起こす魔法とレベルアップ。

中等部になって、ようやく初級攻撃魔法である『火球魔法』を教わる。

魔法はともすれば人を殺傷する事もできる危険な技術。

強力な魔法は、幼いうちにはなかなか学習させてくれないのだ。