慌てて振り返る。
「…自分で帰れる」
顔を背けていて表情はわからなかった。
だけど、本心から言っているようだった。
「わかった♪」
可愛い。
思わず頬が緩む。

歩き始めたのはいいが…歩美ちゃんは1メートルぐらいの距離を保っている。
なんか…避けられてる?
「南美さん…」
声を掛けられピタッと止まる。
「な~に?」
振り向くとすでに歩美ちゃんは止まっていた。
「翔と友美も探してるって言ってたけど…今も探してくれてんの?」
「…あっ!そーいえば!!」
連絡するの忘れてた…。

スカートのポケットから薄いピンク色のケータイを取り出した。
竹井くんに『連絡しろ』って言われたけど、番号知らないんだよね…。
ということで友美に連絡。
3コール後…
「もし…もし?」
「友美?歩美ちゃん見つかったよ」
「ハァ…ホント?!良かった~」
「今から歩美ちゃん家行くから、竹井くんにも伝えといて」
「わかった!今すぐ竹井に連絡するね!」
「ありがとう♪」
ピッと電源ボタンを押した。

「歩美ちゃん、帰ろ!」
「……」
こくんと頷いた。
頷いた時に一瞬顔が見えた。
心なしか少し赤く染まっていた。
暑いのかな?
私は涼しいと思うんだけどな。
…風が気持ちいい。
葉っぱが風で揺れる。
桜はもう枯れていた。
もうすぐで向日葵の季節になる。
でもまた、桜は咲くよね。
枯れた桜の木を見つめながら、来年のことを考えていた。

すると、後ろから声がした。
「後ろ向きながら歩いてると転んじゃうよ!」
「危なっかしい…」
えっ?
早くない?
ゆっくりと振り返る。