さっきよりも近付くと、幽霊(?)の後ろ姿が見えてきた。
ベンチに座って…泣いている。
ゴクッ
唾を飲み込む。
ゆっくりと近付いていく。
手を伸ばせば届く距離まで来た。
意を決してそこから小さな震える声で聞いてみた。

「あの…あなたは、幽霊さんですか…?」
「グスッ。ヒック」
「あの…」
「…れ……う…よ」
「え?」
途切れ途切れですべては聴こえなかった。
「…誰が幽霊なのよ!」
「キャッ」
いきなり大きな声で言われ、しゃがみ込み、小さく叫んでしまった。

「南美さん…」
へっ?
なんで幽霊さんが私の名前、知ってるの?
「幽霊さん…?」
「だから!幽霊じゃないって言ってるでしょ?!」
…この声。
「歩美ちゃん!?」
バッと立ち上がった。

すると、そこには呆れ顔で私を見ている歩美ちゃんがいた。
「歩美ちゃん、帰ろ?」
「嫌」
「なんで?」
「……」
俯いている。

ダメだ。
こんなんじゃ帰れない。
皆、心配してるのに…。
私は歩美ちゃんの手をギュッと握った。
「な、なにす」
「皆…心配してるんだよ!?」
歩美ちゃんの言葉を遮って言う。
「竹井くんも友美も…歩美ちゃんのこと探してるんだよ!」
「だから…早く帰ろう!!」

スタスタ歩き始める私。
歩美ちゃんは黙って着いて来ている。
握っている私が言うのも何だけど…
「手…痛くない?」
「……」
大丈夫かな?

「……て」
「え?」
「離して!」
バッと私から手を離す。
「歩美ちゃん!?」