「おい…。俺の存在忘れてねぇか?」
腕を組んで、鋭い瞳で私達を見ていた。

「あっ…」
そーいえばと付け加えてニヤついていた。
「あっ、じゃねぇよ!あっ、じゃ!」
「だって咲月が可愛くてあんたに気付かなかったんだもん♪」
またぎゅっと抱きつかれた。

く、苦しい。
ばたばた暴れている私の動きを止めたのは、竹井くんの一言。
「…まぁ確かに可愛い」

…え?
ええぇぇぇぇ!?
いきなり可愛いって言われたら照れるよ。
友美は毎日言ってきて抱きついてくるから慣れたけど…。

「だよね。こんなに可愛いんだから男共がほっとくわけないじゃん?」
「…確かに」
「だからあたしは、そんな下心を持って近付く男共から咲月を守ってるわけ」
「まじか!」
「大まぢ。あんたも下心持ってんじゃないの~?」
「バァカ!持ってねぇよ」
…そっか。
ないんだ…。
って何ホッとしてんの!?

「なら良かった。もう咲月を傷付けたくないからね…」
「友美…。いつもいつもありがとうね」
私を守ってくれて。
「何言ってんの?当たり前じゃん!」
キャッキャッじゃれあっていた。

「…あの~。青春してるとこ悪いんだけど、もう2時間目始まる」
「うっそ!まぢ!?」
竹井くんに言われ、初めて時間の存在に気付いた。
「あ…。ホントだ」

ということで、この空き教室から出ることに。
私が最後に出て、扉を閉めるために2人に背を向けた。
ガラガラッ

もう少しで、閉め終わりそうな所に竹井くんが耳元で囁いた。
「いつか、及川じゃなくて俺が守ってやるから」
なっ!?
バッと振り返ると、無邪気な笑顔を浮かべていた。

「早く2人共!」
「おう」
「あっ、待って」
まだドキドキしてる…。
今の笑顔は反則だよ。

そう思いながら、2人の後を着いて行った。