「南」
“南美”そう言おうとしたが南美の言葉に遮られた。

「いやっ!来ないで!」
南美は両手を振り回し俺を近付かせようとしない。

…。
俺は南美を見つめる事しかできなかった。

「グスッ。もう…私に近付かないで!」

南美はとうとう泣き出してしまった。

「…おい?」
俺は南美の言ってる事がよくわからなかった。
…俺に向かって言ってるのか?
そんな疑問さえ浮かんできた。

「もうホントに…私に付きまとわないで!」
南美はガタガタ震え出した。
自分の腕で自分の両腕を包み込んでいた。

付きまとう?
俺が?
んなわけない。
そんなキモい事はしないぜ、俺。

俺は南美が俯いている事を良い事に南美を抱き寄せた。

ビクッと身体を震わせた。
すると、俺から離れようと力一杯押してくる。

でも、南美の力じゃ俺から離れるなんて到底無理だ。

逆にもっと可愛く見える。

「おい」
俺は話をするために南美を教室に残した。
だからこのまま黙ってはいられない。

「やだ、離してよ!離してってば!もう私に近付かないで!村田くん!!」
そう言い終わった南美はハァハァと肩で息をしていた。

…村田?
誰だ、それ。
この学校にいんのか?

なおも俺から離れようとする南美に俺は言った、
「村田って誰?」
と。

すると、南美ははっとして顔をゆっくりと上げた。
今だにうるうるしている瞳で…上目遣いで見られた俺の理性はブッ飛んだ。

俺は南美の顎をくいっと上げ、ゆっくりと顔を近付けていった。