音が聞こえる。何だろう?ここはどこ?
もやがかかっていて、周りはよく見えない。

――笛の…音?

聞こえてくる笛の音に耳を澄ますと、1人の男の人がこちらにやってくる。
顔は…よく見えない。でも、胸が締めつけられる。

『……、話しがあるんだ。』

――何?私に?話しって何?

『俺、好きな人が出来たんだ。だから、もう一緒にはいられない。』

今、なんて言ったの?

突然のさよなら。足元が崩れ落ちたかのような虚脱感。
信じられない。信じたくない。

――待って、そんな勝手にさよならだなんて…私は…離れたくない!

目の前の人にすがって、抱きついて、引きとめたいのに、足が動いてくれない。
あなたは今、どんな顔をしているの?それすら見えない。