シーファがへさきから体を乗りだすと、リュートも勢い良く隣で顔を出す。

「俺も見たいっ!」
「リュートっ、危ないっ…」

シーファが言うと同時にリュートの体が後ろに引かれた。
リュートの黒髪の頭を、後ろから大きな手ががっちり掴んで、離さない。

「ガル!このっ…離せよっ!」

じたばたしながら、手の主のガルを見上げると、ものすごい形相で睨み返された。

「…邪魔をするな。」

「だってよぉ〜俺だって、イルカと話したいし…」

「今は何が起こってるのか調べるのが先だ。」

ガルは有無を言わさぬ口調で、リュートを抑えこむと、シーファに軽く肯いてみせた。
シーファはそれに応えるように、海に向き直り、手を伸ばした。

「何があったか、詳しく教えて?」

シーファの胸の紋章が淡い光りを放ち始める。
すると、ぐらりと船が大きく揺らいだ。

「な、なに?」

ニーナは慌てて舵を強く握る。
船の前の水面がどんどん盛りあがってくる。