椅子を治し、座りなおす。さっきより、すこし離れた場所なのは気のせいではない。
ガルが身を起そうとすると、立ちあがって手を貸す。
後ろの壁にもたれると、さっと離れて椅子に座る。

「もう大丈夫だ。シーファのおかげだな。」

「いや、あれは…なんというか…偶然…?
それより、こっちこそ!助けてくれて、ありがとう。」

「…俺も海宝堂だからな。どんなことでもするさ、宝の為ならな。」

それは操られ、シーファを傷つけて自分を責めていたガルに言った言葉そのままで。顔を見合わせて優しく笑った。

「ニーナだってリュートだって、大切な宝だもんね。」

「ああ、あいつらは俺の兄弟みたいなもんだからな。
でも、お前は…」

ガルの目が急に真剣な色に染まり、シーファの胸が狭くなったように苦しくなる。

「お前のこと…」

「も、もう遅いし!私…」

言葉を遮って立ちあがるシーファをガルは一瞬黙ってから、ふっと笑った。