街の様子もすっかり夕食どきで、海風に乗って運ばれてくるいい匂いをたどっていけば、すぐに宿は見つけることが出来た。

「ここ!ここがいい!」

リュートが一軒の店の前で立ち止まる。
指差す宿の看板には、『海猫亭』と書かれていた。
ニーナとガルは、なんの抵抗もなくその宿に足を進めていく。

「まだ他にもたくさん宿はありそうなのに、どうして?」

そう聞くシーファへのリュートの回答はごく単純なものだった。

「ここが一番旨そうな匂いがしてる!」

リュートの鼻は間違いではなかった。
席に着き、出された料理の旨さと言ったら…一瞬言葉をなくすほどだった。

「な?」

得意げに言うリュートにシーファはこくこくとうなずく。
その旨さは料理が趣味のガルにも火を付けたようで、厨房の中まで見学に行ったほどだった。

久しぶりの陸の上の、雰囲気の良い店で味わう、美味しい料理は4人の心をすっかり解きほぐした。
グラスのぶつかる音、止まらないフォークとナイフ、尽きない話。
4人の笑う声は、その夜遅くまで海猫亭から聞こえていた。