バシャバシャと顔を洗って、トイレットペーパーで鼻を押さえる。
そこまで落ち着いてから、彼女はあたしに言った。
「申し訳ありません。お手を煩わせてしまい…」
「いえいえ、大丈夫ですから。」
そこでフと気がついた。
(遅い、なんて言わないでほしい。あたしも落ち着く必要があったのだ。)
彼女は日本語を使っていた。
そしてあたしを知っていた。
もしかして彼女が例の迎えなのかもしれない。
悩んでいても仕方がないので聞くことにした。
「もしかしてショコラ・リースという人を知っていますか?」
ショコラ・リースとはあたしの父方の叔母である。
叔母は、あたしがこれから行く姉の学校の校長をやっている。
その事実を知ったのは姉から学校の話を聞いた時だった。
なのでもしかしたら…と思ったのだ。
すると彼女はパアァと、またもや顔を輝かせて言った。
「はい、お迎えに参りました。」
それがつい10分前の話だ。