「はい、今からそちらに向かいます。」

そう携帯に向かって話しているのは、もちろんあたしではない。

真っ直ぐのストレートな金髪で深い青ではなく空みたく薄い水色の瞳を持った少女。

英国の茶会がよく似合うだろう。


しかし、その彼女はつい10分前…


トイレで鼻血を大量に流していた。




「イクリ…スバルさん…?」

ボタボタ…

イクリ スバル。

「いえ、違います。」そう言いたかった。
だが残念なことに、それはある意味当たりで、それはよくあることで、さらに名字こそ、あたしはイクリだった。

けど、なりよりも。
あたしはすぐ側の個室からトイレットペーパーを取って彼女に押しつけた。

「鼻血!?ちょっ…大丈夫ですか!?」

あたしがそう言うと彼女は顔をパアァ!と輝かせて嬉しそうにもう一度言った。
「イクリ スバルさんですね!?」

わかった。わかりましたから、お願いです。鼻血を拭いてください。

初対面の人にそこまで言えはできなかったが、もう一度あたしも言った。

「鼻血!大丈夫ですか!?」

すると今度こそ伝わったのか、ハッとした顔をしてトイレットペーパーで鼻を押さえ始めた。


助かった。なんせ手荒い場の水が彼女の鼻血で真っ赤だったからだ。