そして、とうとう時は来た。次はあたしである。
と言うか、もう他に自己紹介をしていない人はいない。
こういうのって、トップバッターも嫌だが、トリを務めるのも嫌だなと思った。
明、まどか、千晶が心配そうにあたしを見ている。
ここは明るく振る舞っても裏目に出そうなので、かえってその三人に心配されると思うので、いつも通りのあたしでいく事にした。

「…し、新庄杏子です…。歳は18です…。今はフリーターをしています…。よ、よろしくお願いします…」

わずか1分足らずの時間なのに、こういうのはいくつになっても慣れない。
話しているうちに、自然と顔は下に傾き、声もどんどん小さくなっていってしまう。それらとは反比例して顔は赤くなる。
全く自分はどうしてこう内向的なんだろう。

フェニックスの皆も、まどかや千晶の時の様に拍手や歓声を上げてくれるが、明らかにそれが二人の時よりはボリュームが落ちている。どうやら琉斗は嘘を吐けない性分の様で、苦笑いを浮かべて拍手をしているだけで、口笛を吹いていなかった。

「えっと…杏子ちゃんは、明と付き合ってるんだよね?」

このままだと微妙な雰囲気になってしまうと思ったんだろう。慎があたしに話題を振ってくれたので、とりあえず返事をした。
色んな人に気を遣わせてしまって、あたしは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
やっぱり行かなきゃ良かったかな…。

「そーよん。こいつ、俺の女。可愛いしょ?」

そう言って、明は後ろからあたしに抱きついた。突然の事に驚き、あたしは「きゃっ」と声をあげてしまった。

「めっちゃ赤くなってる!!可愛いなーオイ!!」

今度は500mlの缶ビールを手にした海が、プルトップに指をかけながら、面白そうに言った。
その目付きは、まるで珍獣でも見ているかの様である。

「そうだよぉ。杏子は純情なんだから、大事にしてよね明くん!」

「泣かしたら、タダじゃ済まないからね」

すかさずまどかと千晶も助け船を出してくれた。
あたしは、明もそうだが、この二人には心底頭が上がらない。今度お礼として夕食でも奢らなければ、と思った。

「千晶ちゃんにそう言われると怖いな〜。でも大丈夫。俺、こいつとはいい加減な気持ちで付き合ってねーから」

明が自信たっぷりにそういうと、男性陣は感心した様でまたも歓声をあげ、先程とは打って変わって大きな拍手をした。
思い出した様に再度口笛を吹き始めた琉斗に、聡美さんがため息を吐いていたのをあたしは見逃さなかった。

「よし、自己紹介もこれで全員終わった事だし、もう一回皆で乾杯しよう!フェニックスと、四人の美少女にカンパーイ!!」

慎がもう一度乾杯の音頭を取り、あたし達は手にしていた飲み物の缶をぶつけ合った。