「どうする?やっぱ行く気にならねぇ?」
ソフトクリームを食べ終えた明が、考え込んでいるあたしに聞く。
「行きたい…けどさぁ。ライブでは見たことあるけど、皆に直接会うのは初めてじゃん。やっぱ緊張するよ」
あたしが唇を噛んで答えた。そりゃあフェニックスのメンバーと一緒に遊べるなんて、願ってもいないチャンスだが、どうしても尻込みしてしまう。
「まぁな、杏子は人見知りだもんな」
この1ヶ月の間に、すっかり明はあたしの性格を把握してしまったらしい。
この前なんか、「杏子は一見わかりにくいけど、蓋を開けてみれば実はわかりやすい」だの「石橋を叩いて割って、渡れなくするタイプ」と評された。
喜んでいいのかわからないし、後者はあまり嬉しくないが。
「じゃあさ、こうしねぇ?」
「え?」
「杏子の友達も誘って、一緒に来てもらう。知ってる奴が俺しかいないより心強いだろ?」
「友達かぁ…いいかもしれない」
頭にまどかと千晶の顔が思い浮かぶ。
いつも学校やバイトや、まどかに至ってはおそらく遊びに忙しいだろうが、今は夏休みだ。
予定が空いていたら、もしかしたら来てくれるかもしれない。
あたしもバイトや、こうして明との逢瀬をつい優先してしまい、二人には【MARS】でのライブの日以来会っていないし、連絡も怠ってしまっていた。
海水浴云々は抜きにしても、二人に会いたかった。
「わかった…聞いてみる!」
「友達ってあのプリクラの?」
「うん」
「そっか、楽しみだな」
明がそう言って、楽しそうにブランコを勢い良く漕いでいる。
あたしは明の中で、千晶の印象深く覚えていたのを思い出した。
千晶に会えるから楽しみなのかなと、ふと悪い方に考えたりもした。
すると、ブランコを漕ぐのを止めた明が、真剣な表情であたしを見ると、ふとその手をあたしの手に重ねた。
「え…」
いきなりの展開に、また頭が何も考えられなくなる。どんどん顔が熱くなっていくのがわかる。我ながら、なんてアドリブに弱いんだろう。
「何が楽しみかって、皆に杏子のこと自慢出来ること。俺の彼女はこんなに可愛いんだぞ、羨ましいだろって」
「そんな、可愛いだなんて…」
つい気恥ずかしくなり、あたしは下を向く。
明があたしの事を、そんな風に思っていたなんて。
あたしの方こそ、自分には勿体ないぐらいの彼氏だって、いつも思っているのに。
前の恋人だった雛妃に比べたら、あたしなんて月とスッポン、美女とこけしか一抹人形だろう。
「杏子は可愛いの。だから、もっと自分に自信持つの。いい?」
明は優しい笑顔を浮かべると、あたしの手をギュッと握った。
なんて温かい手なんだろう。明の体温が、どんどん伝わってくる。
あたしは明を見つめて、「…うん」とだけ言った。
それからは、ずっと手を繋いで過ごした。
夜からは、明がドラムの慎のアパートに泊まりに行くと言うので、結局明のバイトがある日と同じ様な時間にお開きになった。
恒例の、バス停までのお見送りも、あたしがバスに乗るまで手を話さなかった。
まどかと千晶に、この事を報告したら、驚くだろうか?どんな反応をするだろうか?どんな風に思うだろうか?
それが楽しみでもあり、ほんの少しだけ不安になったりもした。
…でも、頭と心がついていかないので、まだこれ以上の進展は今は考えられなかった。
つくづく自分は奥手であると実感した。
ソフトクリームを食べ終えた明が、考え込んでいるあたしに聞く。
「行きたい…けどさぁ。ライブでは見たことあるけど、皆に直接会うのは初めてじゃん。やっぱ緊張するよ」
あたしが唇を噛んで答えた。そりゃあフェニックスのメンバーと一緒に遊べるなんて、願ってもいないチャンスだが、どうしても尻込みしてしまう。
「まぁな、杏子は人見知りだもんな」
この1ヶ月の間に、すっかり明はあたしの性格を把握してしまったらしい。
この前なんか、「杏子は一見わかりにくいけど、蓋を開けてみれば実はわかりやすい」だの「石橋を叩いて割って、渡れなくするタイプ」と評された。
喜んでいいのかわからないし、後者はあまり嬉しくないが。
「じゃあさ、こうしねぇ?」
「え?」
「杏子の友達も誘って、一緒に来てもらう。知ってる奴が俺しかいないより心強いだろ?」
「友達かぁ…いいかもしれない」
頭にまどかと千晶の顔が思い浮かぶ。
いつも学校やバイトや、まどかに至ってはおそらく遊びに忙しいだろうが、今は夏休みだ。
予定が空いていたら、もしかしたら来てくれるかもしれない。
あたしもバイトや、こうして明との逢瀬をつい優先してしまい、二人には【MARS】でのライブの日以来会っていないし、連絡も怠ってしまっていた。
海水浴云々は抜きにしても、二人に会いたかった。
「わかった…聞いてみる!」
「友達ってあのプリクラの?」
「うん」
「そっか、楽しみだな」
明がそう言って、楽しそうにブランコを勢い良く漕いでいる。
あたしは明の中で、千晶の印象深く覚えていたのを思い出した。
千晶に会えるから楽しみなのかなと、ふと悪い方に考えたりもした。
すると、ブランコを漕ぐのを止めた明が、真剣な表情であたしを見ると、ふとその手をあたしの手に重ねた。
「え…」
いきなりの展開に、また頭が何も考えられなくなる。どんどん顔が熱くなっていくのがわかる。我ながら、なんてアドリブに弱いんだろう。
「何が楽しみかって、皆に杏子のこと自慢出来ること。俺の彼女はこんなに可愛いんだぞ、羨ましいだろって」
「そんな、可愛いだなんて…」
つい気恥ずかしくなり、あたしは下を向く。
明があたしの事を、そんな風に思っていたなんて。
あたしの方こそ、自分には勿体ないぐらいの彼氏だって、いつも思っているのに。
前の恋人だった雛妃に比べたら、あたしなんて月とスッポン、美女とこけしか一抹人形だろう。
「杏子は可愛いの。だから、もっと自分に自信持つの。いい?」
明は優しい笑顔を浮かべると、あたしの手をギュッと握った。
なんて温かい手なんだろう。明の体温が、どんどん伝わってくる。
あたしは明を見つめて、「…うん」とだけ言った。
それからは、ずっと手を繋いで過ごした。
夜からは、明がドラムの慎のアパートに泊まりに行くと言うので、結局明のバイトがある日と同じ様な時間にお開きになった。
恒例の、バス停までのお見送りも、あたしがバスに乗るまで手を話さなかった。
まどかと千晶に、この事を報告したら、驚くだろうか?どんな反応をするだろうか?どんな風に思うだろうか?
それが楽しみでもあり、ほんの少しだけ不安になったりもした。
…でも、頭と心がついていかないので、まだこれ以上の進展は今は考えられなかった。
つくづく自分は奥手であると実感した。