メールの内容は、本当に他愛ないものだった。
お互いにバイトや学校など、一日のこれからの予定。
明もやはり音楽が好きで、好きなバンドやアーティストについての情報交換や、おすすめの曲を教え合う。
そんな些細なやり取りなのに、すごく楽しかった。

明は忙しいだろうに、時間を見つけては、ちょくちょくあたしと会ってくれた。
あたしもバイトがあるので、時間帯は夕方や夜の時が多かったが。

明も学生でバンドをやっている、あたしも定職に就いていなく、二人ともお金があまりない、となると行く場所は限られていた。
初めて二人で会った時と同じくファミレスかファーストフード、明がよく行く安くて美味いラーメン屋や定食屋。

この前は明がバイトの給料日前で金欠だと言うので、コンビニでおにぎりやカップラーメン、飲み物を買い込み、公園で二人で過ごした。
その時、明は練習前でギターを持っていて、今作っている曲を弾いて聴かせてくれた。
すると公園で遊んでいた子供達やその親が集まり、ちょっとした人だかりになってしまった。

もう、自分の気持ちをごまかす事はしていなかった。

あたしは、この人が−…明が好き。

憧れのギタリスト、と言う意味ではなく一人の男性として。
それをはっきりと、確信していた。
本当は、初めてギターを弾く彼を見た時から、好きだった。
一目惚れだったのだ。

こうして毎日メールをして、週に何回かは二人で会って−…。
これって、世間で言う【付き合ってる】と言う状態ではないだろうか?
だけど、明はあたしに何もしてこない。
それどころか、「好き」だの「付き合おう」だの、確信めいた言葉は、あたしも明も言っていない。

もしかして、明は本当にただ純粋に【気の合う異性の友達】としか思っていないんだろうか?
それとも、やはり遊ばれている?

明に確かめたくて仕方がない。

「明にとってあたしは何?」
「今のあたし達ってどういう関係なの?」

あたしは、あなたが好きなのに−…。

そう聞きたいのに、勇気が湧いてこない。
悲しい答えが、返ってくるのが怖い。
そもそもそれ以前に、これまでの人生で男の子と交際した事がない為、どう切り出していいのかわからないのだ。