まず苫篠くんの夢ですが、実はあたしは苫篠くんの隠れファンだったのです。クラスに埋もれている、いや自ら望んで埋没している苫篠くんの実にいじらしい一面を、たまたまあたしは目撃してしまったからです。なんと苫篠くんは放課後誰にも内緒でアルバイトをしているのでした。それはとあるお宅に行き、家事やお守りをお手伝いするというようなものです。そこで稼いだお金を苫篠くんは野球部のたけしくんに貢いでいたのです。あたしはこんなことはできないと即座に思ったのでした。あたしじゃなくとも、そこら辺の学生が、周りの目をごまかしつつ、汗みず垂らして一生懸命アルバイトしたお金を、全額他人に渡すなんてことはできないでしょう。できないです。無理です、そんなことは。そう思うと同時に苫篠くんに全面降伏とも言えるような、尊敬の眼差しを送らざるを得なかったのです。
そんな慈しみ慈しまれたい存在の苫篠くんの夢は、そんじょそこらのものとは一線を画しまくっていたのでした。
そんな慈しみ慈しまれたい存在の苫篠くんの夢は、そんじょそこらのものとは一線を画しまくっていたのでした。