「覚えててくれてた?そっか…魔術的にはだめなんだけど…でもあたしはなんか嬉しい…ありがとう竜神くん…あ…これあげる…」

差し出された手の平には、ピンクのセロファン紙に包まれたアメちゃんのようなものがひとつ、ちょんと乗せられていた。あぁ、どうせまたなんかの魔術なんだろう。僕はそれを受け取り、包み紙を取る。ビー玉のようにキレイなアメちゃんの姿があらわになった。

僕は躊躇うことなくそれを口に放り投げた。

舌の上にあるはずのないずっしりとした重量感。試しにおもいっきり噛んでみたら、歯は表面を滑るだけでアメちゃんを砕くことはなかった。

「これ、ビー玉でしょ…」

僕が影法師さんを気遣ってしまう理由とはなんなのだろう。単に影法師さんという一個人がお気に入りなのかもしれない。でもそれだけで片付けてはいけない何かを感じさせる。もしかしたらお守りの許容を越えた強い力の魔術にかけられてしまったのか。影法師さんがアメリカよりも強大な権力を握る日もそう遠くないかもしれない。

でもそれでも一向に構わない僕がいる。影法師さんの魔術で死ねるならそれもありだ。ただ、ちょっと避けたいのは影法師さんを恋愛対象として見てしまうことだ。なんとも煩わしいからそれだけは避けないと。あぁ、きっと僕はこうして恋愛対象を作ることなく一生を終わらせるに違いない。

あぁ、そうさ。僕は誰のものにもなる気はない。そして誰かを所有するつもりもない。