「竜神くん…覚えてるかな…あのとき…竜神くんはあたしに…生きる意味を教えてくれたよ…あたしには…魔術しかないって…教えてくれたのは…竜神くんだよ…」

僕が教えたってか。影法師さんとはなんだかんだで毎日話す仲だけど、その内容は何故か今日のワイドショーの話になる。そしてときにはフラッシュやフライデーを貸し借りしたりしている。はっきり言ってそれ以外の接触はした覚えがない。ちなみに影法師さんは見た目にそぐわず、わりと冷めた目で芸能人を見ており、ゴシップされる芸能人に対してなんともシビアな意見を言い放つのだった。僕はそんな影法師さんを見ると、影法師さんのお部屋をのぞき見してるような気分に駆られて、とてもにやにやできる。

あ。もしかして。

僕はもう既に影法師さんの魔術の毒牙にかかってしまっているんじゃ。

いや。僕にはお守りがあるのだ。影法師さんの魔術にはかかるわけがない。

「4月21日午後1時52分。竜神くんは教室であたしに嫌いなやつなんて呪い殺せばいいふははははは、と言ったわ。雷にうたれた気分だった。それまでのあたしの世界はモノクロだったのに、急に視界が開けて映画のアバターのような飛び出すは流れるはそれはもう一度行っては帰ってこれなくなるような世界に突き落とされたの」