「竜神さんって呼んだ方が…もっともっと悪い人の夢…見てくれるかなぁって…思ったから…」

悪い人の夢?

あぁ、そうだ。僕は何かとてつもない夢を見ていた。でもこの果てしないスカイブルーの空を見たら忘れてしまったんだ。ははっ。だけどどうして右の手の平に違和感があるんだろう。触ると粘つくチューバッカをうっかり触ってしまったような、そんな違和感。そして何より虫のように皮膚上にわきだしてははいずり回る汗が不快指数を500パーセントくらいに急上昇させている。体育を気まぐれで本気でやったときだって、ここまで汗はかいてない。一体、どんな夢だったんだろう。

「影法師さんはオレに悪い人の夢を見せたいの?」

影法師さんは顔中についている溶けたアイスクリームをぬぐいながら、ひとつ確実に頷いた。

「今は周囲の人達しか出てこないだろうけど…そのうちあたしが夢に出たいの…悪い人として…あたし…あたし…ただ竜神くんの夢に悪い人になって出演したいだけ…ただそれだけ…うん…そう…そうなの竜神くん…」

いつの間にか竜神さんから竜神くんになってる。不覚にも笑いそうになった。不覚にも。