「待ってよ。それより影法師さんいつからオレのこと竜神って呼んでるっけ?」

前まで瀬戸さんだったじゃねえか。唯一この学校で僕を竜神とは呼ばない子、瀬戸さんと呼ぶ子が影法師さんだった。よりによって竜神って。別に影法師さんならいいけど。何故なら影法師さんは僕のちょっと気になる容姿をしてるからだ。三白眼のしゅっとした眼、その眼の上にあるはずの眉はない。ちょっと人間離れしてるくらいのしゅっとした鼻。口角がきゅっと締まった小振りの唇。スタイルはこれぞスレンダー美人というのだなと思わせる、見事なものを持っておられる。しかしながらそれを知る男子はいないと思われる。ただひとり、透視能力を持つと言われる変態タカハシくんが影法師さんとは顔を袋にかぶした状態でやりたいと言ってたのを小耳に挟んだので、タカハシくんだけは例外といえよう。

そういう逸話も考慮して、僕は影法師さんの容姿が気になってしまう。会えば結構な頻度でちろちろ見てしまう。それに影法師さんは僕と目を合わせようとしないから、またそういうところもスーパーシャイボーイな僕にとって好都合といえる。でも僕がそんな影法師さんとどうにかなろうと思わないのは、偏にこのアイスクリーム症候群と根暗な性格からだ。というか容姿は気になるだけで、恋愛対象にはなりえない。よく絵画にある裸婦のようなものだ、影法師さんは。僕の中ではエロではなく芸術として処理されているんだ。