八重子を乗せて署に戻ると、丁度陽平と花菜が連れられて来たところだった。


 結局陽平には仔細は語られず、ただ佐藤が陽矢を殺した経緯だけが伝えられ、花菜は父である勝方の親戚に引き取られることが決まった。


 視線を合わせないようにしていた陽平に対し、深く頭を下げた八重子が 対象的だった。


 陽平が花菜に向かって別れ際にぼそりと「元気でな」と言った言葉が、妙に風間の心に残った。


 幼い子どもたちを巻き込んでしまった大人たちの言葉がそこに要約されているようだったからかもしれない。


 世の中で虐待や育児放棄といったことが行われてしまっているなか、この事件の子どもたちはそれとは違う形で命を奪われてしまったり、危険に晒されたりした。


 しかしどの想いも子どものためでありながら、実際果たして本当に子どものためであったのだろうか。


 それに結論は出ないが、風間は榛瀬家と佐藤家、そして金田家に訪れた、凍える冬のような事件がもう二度と起きなければいい、そう思ったのだった。