隠している時点で聡君を傷つけているのかもしれない。
でも毎度のように言えない。
私は何もできない…。
私がずっと黙ったままだったからか、聡君はこう言った。
「分かってるからさ…」
そう言ってまた頭を撫でてくれた。
聡君に隠し事はできないんだった。
誰よりも私を見ている。
それにいつも言っていた。
私は分かりやすいって…。
隠していても分かってしまう。
こんな自分がまた嫌になる。
それからも聡君は何も聞いてこなかった。
帰りのバスの中。
紗月は一人盛り上がっていた。
聡君は紗月を見て笑っていた。
私は遠い空を見ていた。
岡田君はずっと窓の外を見ていた。
楽しくなるはずの夏休みは、重たい空気で始まってしまった。