「じゃあもうとくにやることないみたいだし俺帰るな」

「おー、じゃあな」

「ああ」

静かに閉まっていくドアの向こうで、ともが消えていく。

「……はぁ」

ため息を一つ。

「……そういえば」

この家って、こんな広かったか?
二年前は一度も感じなかった。
いや、ばあちゃんが死んじゃったときに、一度だけ感じた。


「この家ともおさらばか」

いや、もし……いいと言われたら。
智葉とここで暮らしたい。

父さん、母さん、許してくれますか?


智葉を、信じていないわけじゃない。
だけど、時々不安になるんだ。

もしかしたら、智葉に他に好きな人が出来ちゃったんじゃないかって。
もしかしたら、俺のこともう何とも思ってないんじゃないかって。