「チッ」

ん?

「翔ちゃ~ん?今舌打ちしませんでした?」

「いんや」

「いーや、絶対してました!!」

「まぁまぁ、そんなことは置いといてさ…
智葉、おいで」

そ、そんなこと!?
お、置いときたくない…。

舌打ちした
って翔ちゃんが認めるまで置いとくなんてそんなのっ…。

「ちーは」

あたしは渋々翔ちゃんのもとへ寄った。

なんだなんだ?

「はい、お疲れさま。ご褒美」

え!?
手に『何か』を持たされた。

何々?

「え…これ――…」

「黙ってもらっとけ」

『それ』を返そうとするあたしを止める。

「でも…」

「いいから。
ほら暗くなる前に帰れよ?」

あたしはそう言われて数学少人数教室を追い出された。

あたしの手のひらには『それ』がのったまま。