「かーくん…」

「片桐くんと話して、ハッキリ、スッキリさせてこいよ!」

「でも、」

「俺は…ソレからでイーから。」

「…」

「な!だから、当たって砕けるつもりで…しっかりつかまえてこい!」

「だって、」

「大丈夫だから!…砕ける前に、俺が支えてやる!」

「そんなムシの良い話、」

「言っとくけど!…その時は俺、もう離さないから。」


そんな、初めて聞くような声で

「覚悟しろよな。」と、

…今まで見たことのない
いや、いつものように優しく…
いやいや、やはり、
いつもよりも、凛々しい顔をして微笑む清瀬。


その笑顔は、佳菜子の胸を締めつけた。


今まで自分は、清瀬の何を見てきたのかと…


思い起こしてみれば、いつでも、どんな時も…そばに清瀬の姿があった。


その時々で見せた、清瀬の表情が思い浮かんできて…
ふと涙があふれ、慌てて目を反らす。


そんな佳菜子の頭を撫でる清瀬の手は大きく…

包み込むように、ゆっくりと、自分の方へと引き寄せた。


そうなるともう、あふれ出る涙は、そうも簡単には止められず…


そして清瀬も、
これが、最後となるかもしれない佳菜子の背中に回した腕に、
ついつい、力を込めてしまうのだった。