「あの女に取られてイーのか?」

「…」

「どーでもいーけどさ、やることやってからにしろよな…」

「なんであんたに説教されなきゃなんないのよ。」

「!」

「ほっといてよ。」


ムスくれた表情で、さっさと先を行く佳菜子は、

「ちょ、おい!」

清瀬の呼び掛けにも反応を見せずに歩き続ける。


「…ったく。」

清瀬は足を止め、少しずつ離れて行く、その背中に向かって一言。

「勝手にしろ!どうなっても知らねーかんな!」


そして、来た道を戻るつもりで踏み出した。

が、

3秒と保たずに振り返り、佳菜子の元へと駈け寄っては、

「待てよっ!」

腕を掴んで引き止めていた。


「なによ!」

「可愛くねーな、この意地っ張り!」

「放して!」

「そうやって強がって見せてるけど、おまえ本当は怖いんだろ?」

「…なにが?」

「意地張るなよ!自分の気持ちに正直になれって!…どうしたいのか、どうしてほしいのか…きちんと伝えてみろよ。合わせるばっかりじゃなくてさ…」

と、そこまで言った時、

何か、得体の知れないモノに心を突つかれた様な…そんな清瀬は、不意に、

「来いよ。」

「え、ちょっと…なによ?」

無言のまま、近くの小さな公園へと佳菜子を連れ込んでいた。