片桐の運転するクルマは小田原厚木道を目指し、一度下へ降りてから、伊豆スカイラインへと入って行った。


そこまでの距離もなかなかのものだが、

学生の特権である平日のせいか、時間帯が良かったのか、はたまた時期外れ?だったのか、

片桐が想像していたほど、渋滞してはおらず……

これまた運に恵まれ、夜空には星が見えるほど雲も薄かった。


クルマの性能や走り方に、さほど拘らない片桐は、
街灯が整備されていない暗い峠の道を、流れに任せ、安全運転で進んで行く。


おかげで佳菜子は、

「え〜すごい!きれ〜い…」

「日本の夜景もステタもんじゃないな。」

各峠での絶景の眺めに魅了されながら、
夜のドライブを、ゆっくり楽しむことができた。


心なしか、そんな夜空も明るくなりはじめ…

天城高原に到着すると、

「こんだけ晴れてれば、山も島も良く見えそうだな。来た道がさ、全く違って見えるよ。」

「へ〜。楽しみ!」

「ツイてんなぁ、おまえら。」

「日頃の行いが良いからね。」

「はいはい。完全に夜が明けるまで、俺ちょっと寝るわ。」

身体を上着で覆い、仮眠をとる態勢を整えはじめる片桐。