「…堀口には、本当なら兄貴がいてさ、」

「!」

「生まれつき心臓が弱かったんだって。」

「それって、」

「うちの親から聞いた話だから、そんなに詳しくは知らないけど…うちの姉貴の2つ上だって言ってたから、生きてれば23歳か。」

「…」

「弱い体に産んでしまったって、おばさん、自分を責めて大変だったらしいよ。だから、」

「佳菜の出生は、その荒療治ってワケか?」

「子育てのやり直しって言うか…アイツは、一人で二人分なんだ。」

「なるほどね。どーりで…」

「俺、余計なこと言ってる?」

「いや。こんなこと、佳菜の性格じゃ話しづらいだろ。(ヘビーだもんな…)」

「このことは、」

「わかってる。言わないよ。」

「…なら、助かる。」

「俺も、おまえの存在は助かるよ。」

「…なに?」

「これからもさ、色々と教えてくれ。(つきあうには重かったんだろうな…まだ。あぶないあぶない。)」

「んぁ。」


ちょうどその時、

「お待たせ〜」

トイレから佳菜子が出てきて、話は終わった。


「こっからは俺が運転するよ。」

「あーい。頼みます。」


行き先が分からないという理由もあったが、
何の躊躇いも無く、愛車のキーを差し出す清瀬だった。