片桐の家は、あるマンションの最上階だった。


エレベーターを降りると、
その広いフロアーに扉がふたつ。


「(え?これは…)ホントに誰もいないの?」

「兄貴はもう仕事のはず。」


そう言って、右側のドアの鍵を開け、

「あっちは両親とばぁちゃんの家。いずれは兄貴が入るんだ。」

「…オーナーなの?」

「地主ってやつだ。…入れよ。」

とっとと入っていく片桐の

「あ…お邪魔します。」

後に続いてリビングへ…


そこは、それなりに片付いているものの、兄との暮らしを物語る、男っぽさが漂っていた。


「男の二人暮らしか…」

「あっちが兄貴の部屋で、こっちが俺の。」

「向こうは?」

「空かずの間。」

「え!」

「うそだよ。物置部屋。ほとんどが実家の物。見栄はって居間とか造るから、置く場所がないんだ。勘弁してほしいよ。マジで邪魔!」

(3LDKか…あっちはもっと広いんだろうな…)

「何飲む?」

「あ、大地くんと同じで。」

「コーヒーで良い?」

「うん。(色々揃ってるし、なーんか手慣れちゃって…一人暮らしみたいにものだ。なんで今まで部屋に呼んでくれなかったんだろ?)なんか手伝おっか?」

「サンキュ。じゃあコレを…」

(だいたい、ここに来るの、私で何人目?)