「なんでもない。…あ、そーだ、今週末、家の町内のお祭りがあるんだけど、部活の帰りにでも来ない?縁日とかあるし!」

「へー、行く行く!ゆっこちゃん家はココが地元だもんね!」

「たいして大きな祭りじゃないけど、(交流を深めるのには、もってこいのイベントだからねぇ、縁日は。)ね!」

「うん!」



そして、土曜日の練習後、
いつもより丁寧に支度を整えてから、部室を出る佳菜子の目の前を、着替えを済ませた男子部員が立ち塞いでいた。



「じゃ、行くよん!」


ゆっこが掛け声をかけ、
はじめて男子も一緒に行くことを知った佳菜子は、


「ね、ね、ね。」

「ん?」

「いつ、男子も行くことにしたの?」


先頭をきって歩くゆっこに駆け寄り聞いた。


「最初からだけど…なんかマズかった?」

「マズくはないけど…」

「ん?」

「ごめん!」

「え!?なにが?」

「私、慣れないことなんかするから…」

「何のことか、さっぱり分からないんだけど?」

「あのね!清瀬のことなんだけどね」

「清瀬?…急になに?」

「うん。アイツ地元に好きな子がいて…それが私の友達なんだけど。」

「…アイツ振られたの?」

「って言うか、なんにも…」

「できないでいるんだぁ?(あの“何もナイ”って、このことか…)情けない男。」