私は、むなしさと苛立ちでいっぱいになった。 それでも黙っている孝治に、 『難病だったって自分の奥さんが言っても心配の一つもないし、どんな状況なのかも聞こうとしないし、隣(隣人)のことも解決しようとしないし、孝治は家族守る気あんの?』 私が言うと、少しの間黙ったままでいたが、しばらくして口を開いた。 『正直言って、お前の病気からも隣からも逃げ出したい。』 一家の大黒柱が言うセリフではなかった。