「え?」



口の中で呟くような小さな声で、彼女が何か喋った。
聞き返すと、さらに彼女は身を縮めた。




「すきなひとが、」



確かにそう言った。




「好きだった人に裏切られたの」





・・・・・・。


・・・沈黙。





僕はかろうじて鼻で笑いそうになるのをこらえて、それでも存分に見下した。
サディスティックな優越感に浸る。







何が好きな人だ。

何が死ぬだ。

何が裏切りだ。





怒りと、自分より頭の悪い存在を、思いきり見下すという奇妙な快感が渦を巻く。

僕が罵倒の言葉を口にするより先に、女が口を開いた。



「・・・本気で好きだったの。彼は、私の全てだったの。彼に裏切られたら、もう生きている、意味がないの」