「嘘でしょ」


言い切った僕の口調に、驚いて顔をあげる。
怯えたような視線が欝陶しい。



「それじゃないでしょ、本当の理由」



彼女は驚いたように目を見開いたあと、怒られる準備をする子供のように、きゅっと口を真一文字に結んだ。




ばつが悪そうに小さくうなずく。



それでもなかなか薄情しようとしない。苛々した僕は、乱暴に促した。




「なんで。さっさと言えよ」



「・・・・」




躊躇っているように口を開きかけて、やめる。
そのとき、彼女の青白い頬にわずかに朱がさしたのを見逃さなかった。

陰欝を絵に書いたようなこの女が、初めて人間らしい反応をした、と思った。




だが、それもまたすぐに元の無表情に戻る。