更に月日は流れ、それは高校二年生の夏だった――。

 いつものように学校が終わり、今西と隼人と三人でゲーセンに行った帰り道。


「和哉と今西に発表しま~す。実は俺、美久の親友の美少女と会いました~」


 隼人は嬉しそうにそう云った。俺がハンマーで後ろから頭を殴られたようなショックを受けたのは云うまでもない。


「マジかよ! 美久の奴、中学の時俺が会わせてくれって云ってもなかなか会わせてくれなかったんだぜ! 何でお前だけなんだよ! 抜け駆けじゃん」


 今西は興奮気味になっている。そして俺は言葉が出てこない。


「悪いな。美久が、俺だけなら会わせてあげるっていうからさ~。そうそう名前も分かったよ。結麻ちゃんって云うんだ。色白でハーフみたいな顔でさ、すっげー美人。でも話すと明るくて優しいんだよなぁ」


 隼人は得意気に話しながら、少し顔が赤くなっている。まさか隼人の奴も一目惚れしたのではないだろうか。俺は胸騒ぎがした。一番初めに彼女を見たのは俺のはずなのに。そう思うと悔しくて奥歯を噛みしめた。

 美久は、今西が何度も会わせてくれと頼んでも、頑なに会わせてはくれなかったのに、隼人だけは会わせるなんて、一体何を考えているんだろう。確かに隼人は一途なタイプだし、今西みたいに女癖が悪いわけでもない。俺だって隼人と同じように一途だと思う。けれども俺を美少女に会わせないのは、俺が卒業式の日に美久を振ったことと関係があるのだろうか――。


 その後、夕日に目を細めながら俺は無言で歩き、隼人と今西の会話すらまともに聞けなかった。